BAE Systemsが米宇宙軍向け超小型RF端末を設計 止まらない衛星通信網への一歩

BAE Systemsが米宇宙軍向け超小型RF端末を設計 止まらない衛星通信網への一歩

ニュースの概要

BAE Systemsは10月15日、米宇宙軍の宇宙システム司令部から、超小型のRF端末(=電波で信号をやり取りする通信機器)を設計し、実証する契約を獲得したと発表した。対象は、宇宙ベースのデータ層と呼ばれる、衛星同士や衛星と地上局をつなぐ通信の土台である。開発する端末は飛行に対応した小型品で、複数の軌道領域にまたがり、宇宙間通信と宇宙・地上間通信の両方を担う。衛星に積めるスペースも電力も限られるため、小さく省電力でありながら、通信経路を複数確保して一部が止まっても全体が動き続ける性質を持たせることが狙いである。大型衛星を少数打ち上げる発想から、小さな部品を多数の衛星に載せて網を厚くする発想への転換を示す契約といえる。

引用元: BAE Systems、米宇宙軍向け超小型RF端末の設計・実証契約を獲得(SatNews)

分析・見解

衛星の大きさより端末の小ささが勝負を決める

今回の契約で目を引くのは、衛星本体ではなく通信端末という部品に予算がついた点だ。これまで宇宙の通信網は、大型衛星に専用の通信機を載せる形が主流だった。しかし近年は、数百機から数千機の小型衛星を並べる方式が広がっている。SpaceXのStarlinkは数千機規模で運用され、米宇宙開発庁も小型衛星の集合体で軍用の通信網を築こうとしている。

この方式では、衛星1機に載せられる機器の重さと電力が厳しく制限される。端末が大きければ衛星も小さくできず、量産も進まない。端末を小さくすることは、網全体のコストを下げる近道でもある。

高度の違う軌道をまたぐ通信はなぜ難しいのか

今回は、複数の軌道領域で使えることが条件になっている。低軌道は地上から数百km、静止軌道は約3万6000kmで、距離が約百倍も違う。距離が違えば信号の弱まり方も変わる。しかも低軌道の衛星は90分ほどで地球を一周するため、相手との位置関係が刻々と変わる。一つの端末で両方に対応するには、出力やアンテナの向け方、電波の調整をかなり柔軟にしなければならない。

民間では、レーザーを使う光通信端末の小型化競争も進む。ただしレーザーは雲や衛星の揺れに弱い。電波を使うRF端末は、地上との通信や光が使えない場面の保険として今も欠かせない。今回の契約が光でなくRFを軸にしたのは、確実さを優先した判断とみられる。

一本止まっても別の道で届く網という考え方

冗長性とは、道が一本止まっても別の道で届く状態を指す。高速道路が通行止めになっても一般道で目的地に着ける、という例えが近い。軍事の通信では、妨害電波や攻撃で一部の経路が使えなくなることを前提に設計する。端末が小さく安くなれば、各衛星に複数の方式を載せられる。一つの方式が封じられても、残りで通信を続けられる。ここに今回の契約の本質がある。

この動きは、評価の軸が変わりつつあることも示している。かつての防衛調達は、最高性能の一台を競う色が濃かった。これからは、数が多く、替えがきき、早く更新できることが価値になる。壊れにくい網を作る力が、企業の競争力を決める。

実証が終わっても量産と標準化の関門が残る

今回は設計と実証の契約であり、量産の約束ではない。性能が確認されても、他社の方式と比べられ、標準仕様に採用されるかは別の話だ。端末を小さくするほど熱の逃がし方が難しくなり、宇宙の放射線にも耐える必要がある。小さくて強い部品を安定して作れるかが、次の関門になる。

一方、米国が宇宙の通信を共通のデータ層として整理し、端末の規格をそろえようとする流れは明確だ。規格が決まれば、部品メーカーや衛星メーカーが参加しやすくなり、市場は一気に広がる可能性がある。

ビジネスへの影響

部品や衛星を扱う企業が最初に確認すべき点

宇宙関連の企業は、自社の製品が小さく、省電力で、他社の機器と接続できるかを点検したい。米国の動きは、数年後に世界の調達条件になる可能性が高い。日本でも防衛省が宇宙領域の通信網を強化しており、国内企業が海外の衛星網に部品を供給する場面は増えるだろう。まずは公開されている仕様や規格の動きを追い、自社部品が対応できる余地を洗い出すことが現実的な第一歩だ。

あわせて、大手との協業も選択肢に入れたい。端末全体を作れなくても、電源、放熱、アンテナ素材といった部分で強みを出せる中小企業は多い。

宇宙の外にも広がる小型通信の使い道

超小型で低電力の通信技術は、宇宙だけで終わらない。船舶、航空機、山間部の設備、災害時の通信など、地上の回線が届かない場所で役に立つ。物流、農業、資源開発の企業にとっては、衛星経由で遠隔の機器を見守る費用が下がる可能性がある。端末が安くなれば、これまで割に合わなかった用途も採算に乗る。自社の現場に通信の空白地帯がないか、一度洗い出してみる価値がある。

実証段階の話を鵜呑みにしない備え方

注意したいのは、実証契約の段階で過度に期待しないことだ。採用が決まる前に設備投資を急ぐと、仕様変更で無駄になる恐れがある。小さく試し、段階的に広げる姿勢が安全である。契約額や納期が公表されていない点も踏まえ、情報を定期的に更新して確認したい。自社の事業計画には、衛星通信が使えない場合の代替手段も入れておくと、止まらない運用につながる。

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